児《こ》と一所に暮そうと思って、)
とばかりじゃあ、困ります。どんなになさいました処で、千ちゃんと御一所においで遊ばすわけにはまいりません。
(だから、此家《ここ》に居るんじゃあないか。)
その此家《ここ》は山ン中の尼寺じゃアありませんか。こんな処にあの児と二人おいで遊ばしては、世間で何と申しましょう。
(何といわれたって可《い》いんだから、)
それでは、あなた、旦那様に済みますまい。第一親御様なり、また、
(いいえ、それだからもう一生人づきあいをしないつもりで居る。私が分ってるから、可《い》いから、お前たちは帰っておしまい、可いから、分っているのだから、)
とそんな分らないことがありますか。ね、千ちゃん、いくら私たちが家来だからって、ものの理は理さ、あんまりな御無理だから種々《いろいろ》言うと、しまいにゃあただ、
(だって不可《いけな》いから、不可いから、)
とばかりおっしゃって果《はて》しがないの。もうこうなりゃどうしたってかまやしない。どんなことをしてなりと、お詫《わび》はあとですることと、無理やりにも力ずくで、こっちは五人、何の! あんな御新造様、腕ずくならこの蘭一人
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