をいえば、はじめは私もそれならばと思ったがね、考えて見ると、お前様、いつまで、九ツや十で居るものか。もう十八だとそう思って驚いたよ。
何の事はない、密通《まおとこ》だね。
いくら思案をしたって御新造様は人の女房さ。そりゃいくら邸の御新造様だって、何だってやっぱり女房だもの。女房がさ、千ちゃん、たとい千ちゃんだって何だって、男と二人で隠れていりゃ、何のことはない、怒っちゃあいけませんよ、やっぱり何さ。
途方もない、乱暴な小僧《こぞ》ッ児《こ》の癖に、失礼な、末恐しい、見下げ果てた、何の生意気なことをいったって私が家《とこ》に今でもある、アノ籐《とう》で編んだ茶台はどうだい、嬰児《ねんねえ》が這《は》ってあるいて玩弄《おもちゃ》にして、チュッチュッ噛《か》んで吸った歯形がついて残ッてら。叱り倒してと、まあ、怒っちゃあ嫌よ。」
四
「それが何も、御新造様さえ素直に帰るといって下さりゃ、何でもないことだけれど、どうしても帰らないとおっしゃるんだもの。
お帰り遊ばさないたって、それで済むわけのものじゃあございません。一体どう遊ばす思召《おぼしめし》でございます。
(あの
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