に切刻《きざ》まれてでもいそうです。」
「やあやあ、どちらの御婦人で。」
「いや、男の声。不思議にも怪しいにも、婦人《おんな》なら母屋の方に縁はあるが、まさしく男なんですものね。」
「男の声かな、ええ、それは大変。生血を吸われる夥間《おなかま》らしい、南無三《なむさん》、そこで?」
「何しろどこだ知らん。薄気味悪さに、頭《かしら》を擡《もた》げて、熟《じっ》と聞くと……やっぱり、ウーと呻吟《うな》る、それが枕許のその本箱の中らしい。」
「本箱の?」
「一体、向うへ向けたのが気になったんだが、それにしても本箱の中は可訝《おかし》い、とよくよく聞き澄しても、間違いでないばかりか、今度は何です、なお困ったのは、その声が一人でない、二人――三人――三個《みッつ》の本箱、どれもこれも唸《うな》っている。
 ウーウーウーという続けさまのは、厭《いや》な内にもまだしも穏かな方で、時々、ヒイッと悲鳴を上げる、キャッと叫ぶ、ダァーと云う。突刺された、斬《き》られた、焼かれた、と、秒を切って劃《くぎり》のつくだけ、一々ドキリドキリと胸へ来ます。
 私はむっくり起直った。
 ああ、硫黄《いおう》の臭《におい
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