靄《もや》の底の方に響きました。虚空へ上って、ぎゃっと啼くかと思うと、直ぐにまたぎゃっと来る。
 ちょうど谷底から、一軒家を、環《わ》に飛び廻っているようです。幾羽も居るんなら居るで可いが、何だか、その声が、同《おんな》じ一つ鳥のらしいので、変に心地が悪いのです。……およそ三四十|度《たび》、声が聞えたでしょうか。
 枕頭《まくらもと》で、ウーンと呻吟《うめ》くのが響き出した、その声が、何とも言われぬ……」

       二十八

「寝てから多時《しばらく》経《た》つ。これは昼間からの気疲れに、自分の魘《うな》される声が、自然と耳に入るのじゃないか。
 そうも思ったが、しかしやっぱり聞える。聞えるからには、自分でないのは確《たしか》でしょう。
 またどうも呻吟《うめ》くのが、魘されるのとは様子が違って、苦《くるし》み※[#「てへん+爭」、第4水準2−13−24]《もが》くといった調子だ……さ、その同一《おなじ》苦み※[#「てへん+爭」、第4水準2−13−24]くというにも、種々《いろいろ》ありますが、訳は分らず、しかもその苦悩《くるしみ》が容易じゃない。今にも息を引取るか、なぶり殺し
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