落したか、青貝摺《あおがいずり》ので、しかも直ぐ襟許《えりもと》に落ちていました。
待て、女の櫛は、誰も居ない夜具の中に入っていると、すやすやと寝息をするものか、と考えたくらい、もうそれほどの事には驚かず、当然《あたりまえ》のようだったのも、気がどうかしていたんでしょう。
しばらく手に取って視《なが》めていましたが、
(ええ、縁切《えんきり》だ!)
とちと気勢《きお》って、ヤケ気味に床の間へ投出すと、カチリという。折れたか、と吃驚《びっくり》して、拾い直して、密《そっ》と机に乗せた時、いささか、蝦蟆口《がまぐち》の、これで復讎《ふくしゅう》が出来たらしく、大《おおい》に男性の意気を発して、
(どうするものか!)
ぐっと潜って、
(何でも来い。)
で枕を外して、大の字になった、……は可《い》いが、踏伸ばした脚を、直ぐに意気地なく、徐々《そろそろ》縮め掛けたのは……
ぎゃっ!
あれは五位鷺《ごいさぎ》でしょうな。」
「ええ。」
「それとも時鳥《ほととぎす》かも知れませんが、ぎゃっ! と啼《な》きます……
可厭《いや》な声で。はじめ、一声、二声は、横手の崖に満充《みちみ》ちた
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