星女郎
泉鏡花

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)倶利伽羅《くりから》峠

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)特別|好物《ものずき》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)磽※[#「石+角」、第3水準1−89−6]《ぎょうかく》
−−

       一

 倶利伽羅《くりから》峠には、新道と故道とある。いわゆる一騎落から礪波山《となみやま》へ続く古戦場は、その故道で。これは大分以前から特別|好物《ものずき》な旅客か、山伏、行者の類《たぐい》のほか、余り通らなかった。――ところで、今度境三造の過《よぎ》ったのは、新道……天田越《あまだごえ》と言う。絶頂だけ徒歩すれば、俥《くるま》で越された、それも一昔。汽車が通じてからざっと十年になるから、この天田越が、今は既に随分、好事《ものずき》。
 さて目的は別になかった。
 暑中休暇に、どこかその辺《あたり》を歩行《ある》いて見よう。以前幾たびか上下したが、その後《のち》は多年|麓《ふもと》も見舞わ
次へ
全139ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング