、虹《にじ》で染めた蜘蛛の巣のようにも見える――
ずかと無遠慮には踏込み兼ねて、誰か内端《うちわ》に引被《ひっかつ》いで寝た処を揺起《ゆりおこ》すといった体裁……
枕許に坐って、密《そっ》と掻巻《かいまき》の襟へ手を懸けると、冷《つめた》かった。が、底に幽《かすか》に温味《あたたか》のある気がしてなりません。
また気のせいで、どうやら、こう、すやすやと花が夜露を吸う寝息が聞える。可訝《おかし》く、天鵞絨《びろうど》の襟もふっくり高い。
や、開けると、あの顔、――寝乱れた白い胸に、山蟻がぽっちり黒いぞ、と思うと、なぜか、この夜具へ寝るのは、少《わか》い主婦《あるじ》の懐中《ふところ》へ入るようで、心咎《こころとがめ》がしてならないので、しばらく考えていましたがね。
そうでもない、またどんな事で、母屋から出て来ないと限らん。誰か見るとこの体《てい》は、蓋《ふた》を壁にした本箱なり、押入なり、秘密の鍵《かぎ》を盗もう、とするらしく思われよう。心苦しいと思って、思い切って、掻巻の袖を上げると、キラリと光ったものがある。
鱗《うろこ》か、金の、と総毛立つ――と櫛《くし》でした。いつ取
前へ
次へ
全139ページ中97ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング