る》、土蜘蛛の変化《へんげ》同然に心得ましたのは、俗にそれ……棕櫚箒《しゅろぼうき》が鬼、にも増《まさ》った狼狽《うろた》え方、何とも恥入って退《の》けました。
――(山伏め、何を吐《ぬか》す。)――結構でござるとも。その御婦人をお救けなさって、手前もお庇《かげ》で助かりました。
いかにも、不意に貴辺《あなた》にお出逢い申したに就いて、体《てい》の可《い》い怪談をいたし、その実、手前、峠において、異変なる扮装《いでたち》して、昼強盗、追落《おいおとし》はまだな事、御婦人に対し、あるまじき無法不礼を働いたように思召したも至極の至りで。」
「まあ、お先達、貴下《あなた》、」
対向《さしむか》いの三造は、脚絆《きゃはん》を解いた痩脛《やせずね》の、疲切《つかれき》った風していたのが、この時遮る。……
「いやいや、仰せではありますが、早い話が、これが手前なら、やっぱり貴辺をそう存ずる、……道でござる、理でございます。
しかし笑って遣わされ。まず山中毒《やまあたり》とでも申すか、五里霧中とやらに※[#「彳+羊」、第3水準1−84−32]徊《さまよ》いました手前、真人間から見ますると狂人の
前へ
次へ
全139ページ中58ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング