ていると、ばたりと落ちて、脇腹から、鳩尾《みずおち》の下、背中と、浴衣越しに、――それから男に血を彩ろうという――紅《べに》の絵の具皿の覆《こぼ》れかかったのが、我が身の皮を染め、肉を透して、血に交って、洗っても、拭《ぬぐ》っても、濃くなるばかりで、褪《あ》せさえせぬ。
 お綾は貴婦人の膝に縋《すが》って、すべてを打明けて泣いたんです。
 その頃は、もう生れかわったようになって、何某《なにがし》の令夫人だった貴婦人は、我が身も同《おんな》じに、悲《かなし》み傷《いた》んで、何は措《お》いても、その悪い癖を撓《た》め直そうと、千辛万苦《せんしんばんく》したけれども、お綾は、怪《あやし》い情を制し得ない。
 情を知った貴婦人は、それから心着いて試みると、お綾に呪詛《のろ》われたものは、必ず無事ではないのが確《たしか》で。
 今はこう、とお綾の決心を聞いた上、心一つで計らって、姫捨山を見立てました。
 ところが、この倶利伽羅峠は、夢に山の端《は》に白刃《しらは》を拭《ぬぐ》って憩った、まさしくその山の姿だと言う。しかしこの峠を越したのが、少《わか》い人には、はじめて国の境を出たので、その思出
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