もあったからでしょう。
ちょうど、立場《たてば》が荒廃《すた》れて、一軒家が焼残ったというのも奇蹟だからと、そこで貴婦人が買取って、少《わか》い女《ひと》の世を避ける隠れ里にしたのだと言います。
で、一切《すべて》の事は、秘密に貴婦人が取《とり》まかなう。」
三十七
「月に一度、あるいは二度、貴婦人が忍んで山に上って来る。その時は、ああして抱いて、もとは自分から起った事と、膚《はだ》の曇《くもり》に接吻《キッス》をする。
が、雪なす膚に、燃え立つ鬼百合の花は、吸消されもせず、しぼみもしない。のみならず、会心の男が出来て、これはと思うその胸へ、グザと刃《やいば》を描いて刺す時、膚を当てると、鮮紅《からくれない》の露を絞って、生血《いきち》の雫《しずく》が滴点《したた》ると言います。
広間の壁には、竹箆《たけべら》で土を削って、基督《キリスト》の像が、等身に刻みつけて描《か》いてあった。本箱の中も、残らず惨憺《さんたん》たる彩色画《さいしきが》で、これは目当の男のない時、歴史に血を流した人を描くのでした。」
と物語る、三造の声は震えた。……
「お先達。
で、貴
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