流灌頂《ながれかんちょう》ではよもあるまい。路の左右と真中《まんなか》へ、草の中に、三本の竹、荒縄を結渡《ゆいわた》したのが、目の前を遮った、――麓《ふもと》のものの、何かの禁厭《まじない》かとも思ったが、紅紙《べにがみ》をさした箸《はし》も無ければ、強飯《こわめし》を備えた盆も見えぬ。
「可訝《おかし》いな。」
考えるまでもない、手取《てっと》り早く有体《ありてい》に見れば、正にこれ、往来|止《どめ》。
して見ると、先刻《さっき》、路を塞《ふさ》いで彳《たたず》んだ、媼《ばば》の素振《そぶり》も、通りがかりに小耳に挟んだ言《ことば》の端にも、深い様子があるのかも知れぬ。……土地の神が立たせておく、門番かとも疑われる。
が、往来止だで済ましてはいられぬ。もしその意味に従えば、……一寸先へも出られぬのである。
もっとも時|経《た》ったか、竹も古びて、縄も中弛《なかだる》みがして、草に引摺《ひきず》る。跨《また》いで越すに、足を挙ぐるまでもなかったけれども、路に着けた封印は、そう無雑作には破れなかった。
前後《あとさき》を※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》しなが
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