って、舞戻って、鳩尾《みずおち》をビクリと下って、膝をかけて畝《うね》る頃には、はじめ鞠《まり》ほどなのが、段々小さく、豆位になって、足の甲を蠢《うご》めいて、ふっと拇指《おやゆび》の爪から抜ける。その時分には、もう芥子粒《けしつぶ》だけもないのです、お綾さんの爪にも堪《たま》らず、消滅する。
 トはっと気を返して、恍惚《うっとり》目を開《あ》く。夢が覚めたように、起上って、取乱した態《なり》もそのまま、婦《おんな》同士、お綾の膝に乗掛《のりかか》って、頸《くび》に手を搦《から》みながら、切ない息の下で、
(済まないわね。)
 と言うのが、ほとんど例になっていたそうです。――お綾が、よく病人の気を知った事は、一日《あるひ》も痙攣が起って、人事不省なのを介抱していると、病人が、例に因って、
(来たよ。)
 と呻吟《うめ》く。
(……でしょうね、)
 と親類内の従兄《いとこ》とかで、これも関係のあった、――少年の名をお綾が云うと……
(ああ、青い幽霊、)
 と夢中で言った――処へひょっこり廊下から……脱いだ帽子を手に提げて、夏服の青いので生白《なましろ》い顔を出したのは、その少年で。出会頭
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