、御心配を願います、どうぞ。)
と方《かた》なしに頭《つむり》を下げた。
(さあ。)
と大事に居直って、
(それですから、心配をしますんですよ。今の、あのお盃を固めの御祝儀に遊ばして、もうどこへもいらっしゃらないで、お綾さんと一所に、ここにお住い下さるなら、ちっともお障りはありませんけれど、それは、貴下《あなた》お厭《いや》でしょう。)
私は目ばかり働いた。
(ですが、あの通り美しいのに、貴下にお願《ねがい》があると云って、衣物《きもの》も着換えてお給仕に出ました心は、しおらしいではありませんか。私が貴下ならもう、一も二もないけれど……山の中は不可《いけ》ませんか、お可厭《いや》らしいのねえ。)
と歎息をされたのには、私もと胸《むね》を吐《つ》きました。……」
三十
「ちょいと二人とも言《ことば》が途絶えた。
(ですがね、貴下《あなた》、無理にも発程《たっ》てお帰り遊ばそうとするのは――それはお考えものなんですよ。……ああ、綾さんが見えました。)
と居座《いずまい》を開いて、庭を見ながら、
(よく、お考えなさいまし、私どもも、何とか心配をいたします。)
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