る処――その一方だけは可厭《いや》な声がまだ憑着《とりつ》きません。おお! 事ある時は、それから母屋へ遁《に》げよ、という、一条《ひとすじ》の活路なのかも料《はか》られん。……
お先達、」
と大息ついて、
「……こう私が考えたには、所説《いわれ》があります。……それは、お話は前後したが、その何の時でした。――先刻《さっき》、――
(だって、山蟻の附着《くッつ》いてる身体《からだ》ですもの。)
で、しっかり魂を抱取られて、私がトボンとした、と……申しましたな。――そこへ、
(お綾さん、これなのかい。)
と声を掛けて、貴婦人が、衝《つ》と入って来たのでした。……片手に、あの、蒔絵《まきえ》ものの包《つつみ》を提げて、片手に小《ちいさ》な盆を一個《ひとつ》。それに台のスッと細い、浅くてぱッと口の開いた、ひどくハイカラな硝子盃《コップ》を伏せて、真緑《まみどり》で透通る、美しい液体の入った、共口の壜《びん》が添って、――三分ぐらい上が透いていたのでしたっけ。
(ああ、それなの、憚《はばか》りさま。)
と少《わか》いのが言うと、
(手の着かないのは無いようね。)
と緑の露の映る手で
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