び石臼《いしうす》だの、松《まつ》の葉《は》だの、屋根《やね》にも廂《ひさし》にも睨《にら》まれる、あの、此上《このうへ》もない厭《いや》な思《おもひ》をしなければならぬの歟《か》と、それもならず。靜《ぢつ》と立《た》つてると、天窓《あたま》がふら/\、おしつけられるやうな、しめつけられるやうな、犇々《ひし/\》と重《おも》いものでおされるやうな、切《せつ》ない、堪《たま》らない氣《き》がして、もはや!横《よこ》に倒《たふ》れようかと思《おも》つた。
處《ところ》へ、荷車《にぐるま》が一|臺《だい》、前方《むかう》から押寄《おしよ》せるが如《ごと》くに動《うご》いて、來《き》たのは頬被《ほゝかぶり》をした百姓《ひやくしやう》である。
これに夢《ゆめ》が覺《さ》めたやうになつて、少《すこ》し元氣《げんき》がつく。
曳《ひ》いて來《き》たは空車《からぐるま》で、青菜《あをな》も、藁《わら》も乘《の》つて居《ゐ》はしなかつたが、何故《なぜ》か、雪《ゆき》の下《した》の朝市《あさいち》に行《ゆ》くのであらうと見《み》て取《と》つたので、なるほど、星《ほし》の消《き》えたのも、空《そら》が
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