色《いろ》に空《そら》に連《つらな》つて居《ゐ》る。浪打際《なみうちぎは》は綿《わた》をば束《つか》ねたやうな白《しろ》い波《なみ》、波頭《なみがしら》に泡《あわ》を立《た》てて、どうと寄《よ》せては、ざつと、おうやうに、重々《おも/\》しう、飜《ひるがへ》ると、ひた/\と押寄《おしよ》せるが如《ごと》くに來《く》る。これは、一|秒《べう》に砂《すな》一|粒《りふ》、幾億萬年《いくおくまんねん》の後《のち》には、此《こ》の大陸《たいりく》を浸《ひた》し盡《つく》さうとする處《ところ》の水《みづ》で、いまも、瞬間《しゆんかん》の後《のち》も、咄嗟《とつさ》のさきも、正《まさ》に然《しか》なすべく働《はたら》いて居《ゐ》るのであるが、自分《じぶん》は餘《あま》り大陸《たいりく》の一端《いつたん》が浪《なみ》のために喰缺《くひか》かれることの疾《はや》いのを、心細《こゝろぼそ》く感《かん》ずるばかりであつた。
妙長寺《めうちやうじ》に寄宿《きしゆく》してから三十|日《にち》ばかりになるが、先《さき》に來《き》た時分《じぶん》とは濱《はま》が著《いちじる》しく縮《ちゞ》まつて居《ゐ》る。町《
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