ちうえ》で、この爺は見世物《みせもの》の種かしらん、といやな香《におい》を手でおさえて見ていると、爺がな、クックックッといい出した。
恐しい鼻呼吸《はないき》じゃあないか、荷車に積んだ植木鉢の中に突込《つっこ》むようにして桔梗を嗅《か》ぐのよ。
風流気はないが秋草が可哀そうで見ていられない。私は見返《みかえり》もしないで、さっさとこっちへ通抜けて来たんだが、何だあれは。」といいながらも判事は眉根を寄せたのである。
「お聞きなさいまし旦那様、その爺のためにお米が飛んだことになりました。」
九
「まずあれは易者なんで、佐助めが奥様に勧めましたのでございます、鼻は卜《うらない》をいたします。」
「卜を。」
「はい、卜をいたしますが、旦那様、あの筮竹《ぜいちく》を読んで算木を並べます、ああいうのではございません。二三度何とかいう新聞にも大騒ぎを遣って書きました。耶蘇《ヤソ》の方でむずかしい、予言者とか何とか申しますとのこと、やっぱり活如来《いきにょらい》様が千年のあとまでお見通しで、あれはああ、これはこうと御存じでいらっしゃるといったようなものでございますとさ。」
真顔
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