政談十二社
泉鏡花
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)町端《まちはずれ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二歩|行《ゆ》く内
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》した
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一
東京もはやここは多摩の里、郡の部に属する内藤新宿の町端《まちはずれ》に、近頃新開で土の色赤く、日当《ひあたり》のいい冠木門《かぶきもん》から、目のふちほんのりと酔《えい》を帯びて、杖を小脇に、つかつかと出た一名の瀟洒《しょうしゃ》たる人物がある。
黒の洋服で雪のような胸、手首、勿論靴で、どういう好みか目庇《まびさし》のつッと出た、鉄道の局員が被《かぶ》るような形《かた》なのを、前さがりに頂いた。これにてらてらと小春の日の光を遮って、やや蔭になった頬骨《ほおぼね》のちっと出た、目の大きい、鼻の隆《たか》い、背のすっくりした、人品に威厳のある年齢《ねんぱい》三十ばかりなるが、引緊《ひきしま》
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