ハイ、山の根っこさ藪《やぶ》の中へ棄てたでごぜえます。女中たちが殺すなと言うけえ。」
「その方が心持《こころもち》が可《い》い、命を取ったんだと、そんなにせずともの事を、私《わたし》が訴人《そにん》したんだから、怨《うら》みがあれば、こっちへ取付《とッつ》くかも分らずさ。」
「はははは、旦那様の前だが、やっぱりお好きではねえでがすな。奥にいた女中は、蛇がと聞いただけでアレソレ打騒《ぶっさわ》いで戸障子《としょうじ》へ当《あた》っただよ。
私《わし》先ず庭口《にわぐち》から入って、其処《そこ》さ縁側《えんがわ》で案内《あんねえ》して、それから台所口《だいどこぐち》に行ってあっちこっち探索のした処《ところ》、何が、お前様|御勘考《ごかんこう》さ違わねえ、湯殿《ゆどの》に西の隅《すみ》に、べいらべいら舌さあ吐《は》いとるだ。
思ったより大《でっこ》うがした。
畜生め。われさ行水《ぎょうずい》するだら蛙《かえる》飛込《とびこ》む古池《ふるいけ》というへ行けさ。化粧部屋|覗《のぞ》きおって白粉《おしろい》つけてどうしるだい。白鷺《しらさぎ》にでも押惚《おっぽ》れたかと、ぐいとなやして動かさ
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