ぶると細《こまか》に躍《おど》る。
「アリャ」
小獅子は路《みち》へ橋に反《そ》った、のけ様《ざま》の頤《あぎと》ふっくりと、二《ふた》かわ目《め》に紅《こう》を潮《ちょう》して、口許《くちもと》の可愛《かわい》らしい、色の白い児《こ》であった。
三十四
「おほほほ、大層勉強するわねえ、まあ、お待ちよ。あれさ、そんなに苦しい思いをして引《ひっ》くりかえらなくっても可《い》いんだよ、可いんだよ。」
と圧《おさ》えつけるようにいうと、ぴょいと立直《たちなお》って頭《かしら》の堆《うずたか》く大きく突出《つきで》た、紅《くれない》の花の廂《ひさし》の下に、くるッとした目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って立った。
ブルブルッと、跡《あと》を引いて太鼓が止《や》む。
美女《たおやめ》は膝をずらしながら、帯に手をかけて、揺《ゆ》り上げたが、
「お待ちよ、今お銭《あし》を上《あげ》るからね、」
手帳の紙へはしり書《がき》して、一枚|手許《てもと》へ引切《ひきき》った、そのまま獅子をさし招いて、
「おいでおいで、ああ、お前ね、これを持って、その角《かど
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