に棟《むね》を並《なら》ぶる木屋《きや》の大家《たいけ》で、軒《のき》、廂《ひさし》、屋根《やね》の上《うへ》まで、犇《ひし》と木材《もくざい》を積揃《つみそろ》へた、眞中《まんなか》を分《わ》けて、空高《そらだか》い長方形《ちやうはうけい》の透間《すきま》から凡《およ》そ三十|疊《でふ》も敷《し》けようといふ店《みせ》の片端《かたはし》が見《み》える、其《そ》の木材《もくざい》の蔭《かげ》になつて、日《ひ》の光《ひかり》もあからさまには射《さ》さず、薄暗《うすぐら》い、冷々《ひや/\》とした店前《みせさき》に、帳場格子《ちやうばがうし》を控《ひか》へて、年配《ねんぱい》の番頭《ばんとう》が唯《たゞ》一人《ひとり》帳合《ちやうあひ》をしてゐる。これが角屋敷《かどやしき》で、折曲《をれまが》ると灰色《はひいろ》をした道《みち》が一筋《ひとすぢ》、電柱《でんちう》の著《いちじる》しく傾《かたむ》いたのが、前《まへ》と後《うしろ》へ、別々《べつ/\》に頭《かしら》を掉《ふ》つて奧深《おくぶか》う立《た》つて居《ゐ》る、鋼線《はりがね》が又《また》半《なか》だるみをして、廂《ひさし》よりも低《
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