ひく》い處《ところ》を、弱々《よわ/\》と、斜《なゝ》めに、さも/\衰《おとろ》へた形《かたち》で、永代《えいたい》の方《はう》から長《なが》く續《つゞ》いて居《ゐ》るが、圖《づ》に描《か》いて線《せん》を引《ひ》くと、文明《ぶんめい》の程度《ていど》が段々《だん/\》此方《こつち》へ來《く》るに從《したが》うて、屋根越《やねごし》に鈍《にぶ》ることが分《わか》るであらう。
單《たん》に電柱《でんちう》ばかりでない、鋼線《はりがね》ばかりでなく、橋《はし》の袂《たもと》の銀杏《いてふ》の樹《き》も、岸《きし》の柳《やなぎ》も、豆腐屋《とうふや》の軒《のき》も、角家《かどや》の塀《へい》も、それ等《ら》に限《かぎ》らず、あたりに見《み》ゆるものは、門《もん》の柱《はしら》も、石垣《いしがき》も、皆《みな》傾《かたむ》いて居《ゐ》る、傾《かたむ》いて居《ゐ》る、傾《かたむ》いて居《ゐ》るが盡《こと/″\》く一樣《いちやう》な向《むき》にではなく、或《ある》ものは南《みなみ》の方《はう》へ、或《ある》ものは北《きた》の方《はう》へ、また西《にし》の方《はう》へ、東《ひがし》の方《はう》へ、
前へ
次へ
全46ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング