つて、肱《ひぢ》を張《は》つて長々《なが/\》と伸《の》び、一人《ひとり》は横《よこ》ざまに手枕《てまくら》して股引《もゝひき》穿《は》いた脚《あし》を屈《かゞ》めて、天窓《あたま》をくツつけ合《あ》つて大工《だいく》が寢《ね》そべつて居《ゐ》る。普請小屋《ふしんごや》と、花崗石《みかげいし》の門柱《もんばしら》を並《なら》べて扉《とびら》が左右《さいう》に開《ひら》いて居《ゐ》る、門《もん》の内《うち》の横手《よこて》の格子《かうし》の前《まへ》に、萌黄《もえぎ》に塗《ぬ》つた中《なか》に南《みなみ》と白《しろ》で拔《ぬ》いたポンプが据《すわ》つて、其《その》縁《ふち》に釣棹《つりざを》と畚《ふご》とがぶらりと懸《かゝ》つて居《ゐ》る、眞《まこと》にもの靜《しづ》かな、大家《たいけ》の店前《みせさき》に人《ひと》の氣勢《けはひ》もない。裏庭《うらには》とおもふあたり、遙《はる》か奧《おく》の方《かた》には、葉《は》のやゝ枯《か》れかゝつた葡萄棚《ぶだうだな》が、影《かげ》を倒《さかしま》にうつして、此處《こゝ》もおなじ溜池《ためいけ》で、門《もん》のあたりから間近《まぢか》な橋《はし
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