《さう》いふんだ。
詰《つま》らねえことを父爺《ちやん》いふもんぢやあねえ、山《やま》ン中《なか》の爺婆《ぢゞばゞ》でも鹽《しほ》したのを食《た》べるツてよ。
煮《に》たのが、心持《こゝろもち》が惡《わる》けりや、刺身《さしみ》にして食《た》べないかツていふとね、身震《みぶるひ》をするんだぜ。刺身《さしみ》ツていやあ一寸試《いつすんだめし》だ、鱠《なます》にすりやぶつ/\切《ぎり》か、あの又《また》目口《めくち》のついた天窓《あたま》へ骨《ほね》が繋《つなが》つて肉《にく》が絡《まと》ひついて殘《のこ》る圖《づ》なんてものは、と厭《いや》な顏《かほ》をするからね。あゝ、」といつて與吉《よきち》は頷《うなづ》いた。これは力《ちから》を入《い》れて對手《あひて》に其《その》意《い》を得《え》させようとしたのである。
「左樣《さう》なんかねえ、年紀《とし》の故《せゐ》もあらう、一《ひと》ツは氣分《きぶん》だね、お前《まへ》さん、そんなに厭《いや》がるものを無理《むり》に食《た》べさせない方《はう》が可《い》いよ、心持《こゝろもち》を惡《わる》くすりや身體《からだ》のたしにもなんにもならな
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