いわねえ。」
「でも痩《や》せるやうだから心配《しんぱい》だもの。氣《き》が着《つ》かないやうにして食《た》べさせりや、胸《むね》を惡《わる》くすることもなからうからなあ、いまの豆腐《とうふ》の何《なに》よ。ソレ、」
「骨《ほね》のあるがんもどきかい、ほゝゝゝほゝ、」と笑《わら》つた、垢拔《あかぬ》けのした顏《かほ》に鐵漿《かね》を含《ふく》んで美《うつく》しい。
片頬《かたほ》に觸《ふ》れた柳《やなぎ》の葉先《はさき》を、お品《しな》は其《その》艶《つや》やかに黒《くろ》い前齒《まへば》で銜《くは》へて、扱《こ》くやうにして引斷《ひつき》つた。青《あを》い葉《は》を、カチ/\と二《ふた》ツばかり噛《か》むで手《て》に取《と》つて、掌《てのひら》に載《の》せて見《み》た。トタンに框《かまち》の取着《とツつき》の柱《はしら》に凭《もた》れた淺黄《あさぎ》の手絡《てがら》が此方《こつち》を見向《みむ》く、うら少《わかい》のと面《おもて》を合《あ》はせた。
其《その》時《とき》までは、殆《ほとん》ど自分《じぶん》で何《なに》をするかに心着《こゝろづ》いて居《ゐ》ないやう、無意識《むいしき
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