方《いゝはう》だつていふけれど、え、魚氣《さかなつけ》を食《く》はねえぢやあ、身體《からだ》が弱《よわ》るつていふのに、父爺《ちやん》はね、腥《なまぐさ》いものにや箸《はし》もつけねえで、豆腐《とうふ》でなくつちやあならねえツていふんだ。え、おかみさん、骨《ほね》のある豆腐《とうふ》は出來《でき》まいか。」と思出《おもひだ》したやうに唐突《だしぬけ》にいつた。
五
「おや、」
お品《しな》は與吉《よきち》がいふことの餘《あま》り突拍子《とつぴやうし》なのを、笑《わら》ふよりも先《ま》づ驚《おどろ》いたのである。
「ねえ、親方《おやかた》に聞《き》いて見《み》てくんねえ、出來《でき》さうなもんだなあ。雁《がん》もどきツて、ほら、種々《いろん》なものが入《はひ》つた油揚《あぶらあげ》があらあ、銀杏《ぎんなん》だの、椎茸《しひたけ》だの、あれだ、あの中《なか》へ、え、肴《さかな》を入《い》れて交《ま》ぜツこにするてえことあ不可《いけ》ねえのかなあ。」
「そりや、お前《まへ》さん。まあ、可《い》いやね、聞《き》いて見《み》て置《お》きませうよ。」
「あゝ、聞《き》いて見《
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