ゑ》の響《ひゞ》く處《ところ》妖氛《えうふん》人《ひと》を襲《おそ》ひ、變幻《へんげん》出沒《しゆつぼつ》極《きはま》りなし。
 されば郷《がう》屋敷田畝《やしきたんぼ》は市民《しみん》のために天工《てんこう》の公園《こうゑん》なれども、隱然《いんぜん》(應《おう》)が支配《しはい》する所《ところ》となりて、猶《なほ》餅《もち》に黴菌《かび》あるごとく、薔薇《しやうび》に刺《とげ》あるごとく、渠等《かれら》が居《きよ》を恣《ほしいまゝ》にする間《あひだ》は、一|人《にん》も此《この》惜《をし》むべき共樂《きようらく》の園《その》に赴《おもむ》く者《もの》なし。其《その》去《さ》つて暫時《ざんじ》來《きた》らざる間《あひだ》を窺《うかゞ》うて、老若《らうにやく》爭《あらそ》うて散策《さんさく》野遊《やいう》を試《こゝろ》む。
 さりながら應《おう》が影《かげ》をも止《とゞ》めざる時《とき》だに、厭《いと》ふべき蛇喰《へびくひ》を思《おも》ひ出《いだ》さしめて、折角《せつかく》の愉快《ゆくわい》も打消《うちけ》され、掃愁《さうしう》の酒《さけ》も醒《さ》むるは、各自《かくじ》が伴《ともな》
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