に堆《うづたか》く、湯《ゆ》の中《なか》に煮《に》えたる肉《にく》をむしや――むしや喰《く》らへる樣《さま》は、身《み》の毛《け》も戰悚《よだ》つばかりなりと。
(應《おう》)とは殘忍《ざんにん》なる乞丐《きつかい》の聚合《しうがふ》せる一團體《いちだんたい》の名《な》なることは、此一《このいち》を推《お》しても知《し》る可《べ》きのみ。生《い》ける犬《いぬ》を屠《ほふ》りて鮮血《せんけつ》を啜《すゝ》ること、美《うつく》しく咲《さ》ける花《はな》を蹂躙《じうりん》すること、玲瓏《れいろう》たる月《つき》に向《むか》うて馬糞《ばふん》を擲《なげう》つことの如《ごと》きは、言《い》はずして知《し》るベきのみ。
 然《しか》れども此《こ》の白晝《はくちう》横行《わうぎやう》の惡魔《あくま》は、四時《しじ》恆《つね》に在《あ》る者《もの》にはあらず。或《あるひ》は週《しう》を隔《へだ》てて歸《かへ》り、或《あるひ》は月《つき》をおきて來《きた》る。其《その》去《さ》る時《とき》來《きた》る時《とき》、進退《しんたい》常《つね》に頗《すこぶ》る奇《き》なり。
 一|人《にん》榎《えのき》の下《
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