まだ一個人《いつこじん》の食物《しよくもつ》に干渉《かんせふ》せざる以上《いじやう》は、警吏《けいり》も施《ほどこ》すべき手段《しゆだん》なきを如何《いかん》せむ。
蝗《いなご》、蛭《ひる》、蛙《かへる》、蜥蜴《とかげ》の如《ごど》きは、最《もつと》も喜《よろこ》びて食《しよく》する物《もの》とす。語《ご》を寄《よ》す(應《おう》)よ、願《ねが》はくはせめて糞汁《ふんじふ》を啜《すゝ》ることを休《や》めよ。もし之《これ》を味噌汁《みそしる》と洒落《しやれ》て用《もち》ゐらるゝに至《いた》らば、十|萬石《まんごく》の稻《いね》は恐《おそ》らく立處《たちどころ》に枯《か》れむ。
最《もつと》も饗膳《きやうぜん》なりとて珍重《ちんちよう》するは、長蟲《ながむし》の茹初《ゆでたて》なり。蛇《くちなは》[#ルビの「くちなは」は底本では「くちはな」]の料理《れうり》鹽梅《あんばい》を潛《ひそ》かに見《み》たる人《ひと》の語《かた》りけるは、(應《おう》)が常住《じやうぢう》の居所《ゐどころ》なる、屋根《やね》なき褥《しとね》なき郷《がう》屋敷田畝《やしきたんぼ》の眞中《まんなか》に、銅《あかゞ
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