》驚《おどろ》く可《べ》き報怨《しかへし》を蒙《かうむ》りてより後《のち》は、見《み》す/\米錢《べいせん》を奪《うば》はれけり。
 渠等《かれら》は己《おのれ》を拒《こば》みたる者《もの》の店前《みせさき》に集《あつま》り、或《あるひ》は戸口《とぐち》に立並《たちなら》び、御繁昌《ごはんじやう》の旦那《だんな》吝《けち》にして食《しよく》を與《あた》へず、餓《う》ゑて食《くら》ふものの何《なに》なるかを見《み》よ、と叫《さけ》びて、袂《たもと》を深《さ》ぐれば畝々《うね/\》と這出《はひい》づる蛇《くちなは》を掴《つか》みて、引斷《ひきちぎ》りては舌鼓《したうち》して咀嚼《そしやく》し、疊《たゝみ》とも言《い》はず、敷居《しきゐ》ともいはず、吐出《はきいだ》しては舐《ねぶ》る態《さま》は、ちらと見《み》るだに嘔吐《おうど》を催《もよほ》し、心弱《こゝろよわ》き婦女子《ふぢよし》は後三日《のちみつか》の食《しよく》を廢《はい》して、病《やまひ》を得《え》ざるは寡《すく》なし。
 凡《およ》そ幾百戸《いくひやくこ》の富家《ふか》、豪商《がうしやう》、一|度《ど》づゝ、此《この》復讐《しか
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