》す。驚破《すは》「應《おう》」來《きた》れりと叫《さけ》ぶ時《とき》は、幼童《えうどう》婦女子《ふぢよし》は遁隱《にげかく》れ、孩兒《がいじ》も怖《おそ》れて夜泣《よなき》を止《とゞ》む。
「應《おう》」は普通《ふつう》の乞食《こつじき》と齊《ひと》しく、見《み》る影《かげ》もなき貧民《ひんみん》なり。頭髮《とうはつ》は婦人《をんな》のごとく長《なが》く伸《の》びたるを結《むす》ばず、肩《かた》より垂《た》れて踵《かゝと》に到《いた》る。跣足《せんそく》にて行歩《かうほ》甚《はなは》だ健《けん》なり。容顏《ようがん》隱險《いんけん》の氣《き》を帶《お》び、耳《みゝ》敏《さと》く、氣《き》鋭《するど》し。各自《おの/\》一|條《でう》の杖《つゑ》を携《たづさ》へ、續々《ぞく/\》市街《しがい》に入込《いりこ》みて、軒毎《のきごと》に食《しよく》を求《もと》め、與《あた》へざれば敢《あへ》て去《さ》らず。
初《はじ》めは人皆《ひとみな》懊惱《うるさゝ》に堪《た》へずして、渠等《かれら》を罵《のゝし》り懲《こ》らせしに、爭《あらそ》はずして一旦《いつたん》は去《さ》れども、翌日《よくじつ
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