たい》の味が違ふと言はぬか。あれ等《ら》を苦《くるし》ませては成らぬ、悲《かなし》ませては成らぬ、海の水を酒にして泳がせろ。
一の烏 むゝ、其処《そこ》で、椅子《いす》やら、卓子《テエブル》やら、天幕《テント》の上げさげまで手伝ふかい。
三の烏 彼《あ》れほどのものを、(天幕《テント》を指す)持運《もちはこ》びから、始末まで、俺たちが、此の黒い翼で人間の目から蔽《おお》うて手伝ふとは悟《さと》り得ず、薄《すすき》の中に隠したつもりの、彼奴等《あいつら》の甘さが堪《たま》らん。が、俺たちの為す処《ところ》は、退《しりぞ》いて見ると、如法《にょほう》これ下女下男の所為《しょい》だ。天《あめ》が下《した》に何と烏ともあらうものが、大分|権式《けんしき》を落すわけだな。
二の烏 獅子《しし》、虎《とら》、豹《ひょう》、地を走る獣《けもの》。空を飛ぶ仲間では、鷲《わし》、鷹《たか》、みさごぐらゐなものか、餌食を掴《つか》んで容色《きりょう》の可《い》いのは。……熊なんぞが、あの形で、椎《しい》の実《み》を拝んだ形な。鶴《つる》とは申せど、尻を振つて泥鰌《どじょう》を追懸《おっか》ける容体《ようだ
前へ
次へ
全36ページ中31ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング