い》さん怒《おこ》るだらう。
画工 (解し得ず)俺が怒《おこ》る、何を……何を俺が怒るんだ。生命《いのち》がけで、描《か》いて文部省の展覧会で、平《へえ》つくばつて、可《い》いか、洋服の膝《ひざ》を膨らまして膝行《いざ》つてな、いゝ図ぢやないぜ、審査所のお玄関で頓首《とんしゅ》再拝《さいはい》と仕《つかまつ》つた奴を、紙鉄砲《かみでっぽう》で、ポンと撥《は》ねられて、ぎやふんとまゐつた。それでさへ怒り得ないで、悄々《すごすご》と杖《つえ》に縋《すが》つて背負《しょ》つて帰る男ぢやないか。景気よく馬肉《けとばし》で呷《あお》つた酒なら、跳ねも、いきりもしようけれど、胃のわるい処《ところ》へ、げつそりと空腹《すきばら》と来て、蕎麦《そば》ともいかない。停車場《ステエション》前で饂飩《うどん》で飲んだ、臓腑《ぞうふ》が宛然《さながら》蚯蚓《みみず》のやうな、しツこしのない江戸児擬《えどっこまがい》が、何《ど》うして腹なんぞ立て得《え》るものかい。ふん、だらしやない。
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他《た》の小児《こども》はきよろ/\見て居る。
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