憶せらるるであろう。

       三十二

「滝さん、滝さん、おい、おい。」
「私《わっち》かい、」と滝太歩を停《とど》めて振返ると、木蔭を径《こみち》へずッと出たのは、先刻《さっき》から様子を伺っていた婦人《おんな》である。透かして見るより懐しげに、
「おう来たのか、おいら約束の処へ行ってお前《めえ》の来るのを待ってたんだけれども、ちょいと係合《かかりあい》で歩《ぶ》に取られて出て来たんだ。路《みち》は一筋だから大丈夫だとは思ったが、逢い違わなければ可いと思っての。」
「そう、私実は先刻《さっき》からここに居たんだよ。路先を切って何か始まったから、田舎は田舎だけに古風なことをすると思ってね、旅稼《たびかせぎ》の積《つもり》でぐッとお安く真中《まんなか》へ入ってやろうかと思ってる処へ、お前さんがお出《いで》だから見ていたの。あい、おかしくッて可《よ》うござんした。ここいらじゃあ尾鰭《おひれ》を振って、肩肱《かたひじ》を怒《いか》らしそうな年上なのを二人まで、手もなく追帰《おッかえ》したなあ大出来だ、ちょいと煽《あお》いでやりたいわねえ、滝さんお手柄。」
「馬鹿なことを謂ってらあ、何
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