い、憎まれものの殺生|好《ずき》はまた相応した力もあった。それはともかく、あの悪智慧のほどが可恐《おそろ》しい、行末が思い遣られると、見るもの聞くもの舌を巻いた。滝太郎がその挙動を、鋭い目で角の屑屋の物置みたような二階の格子窓に、世を憚《はばか》る監視中の顔をあてて、匍匐《はらばい》になって見ていた、窃盗《せっとう》、万引、詐偽《さぎ》もその時|二十《はたち》までに数《すう》を知らず、ちょうど先月までくらい込んでいた、巣鴨が十たび目だという凄《すご》い女、渾名《あだな》を白魚のお兼といって、日向《ひなた》では消えそうな華奢《きゃしゃ》姿。島田が黒いばかり、透通るような雪の肌の、骨も見え透いた美しいのに、可恐《おそろ》しい悪党。すべて滝太郎の立居|挙動《ふるまい》に心を留めて、人が爪弾《つまはじき》をするのを、独り遮って賞《ほ》めちぎっていたが、滝ちゃん滝ちゃんといって可愛がること一通《ひととおり》でなかった処。……
滝太郎が、その後《のち》十一の秋、母親が歿《みまか》ると、双葉にして芟《か》らざればなどと、差配佐次兵衛、講釈に聞いて来たことをそのまま言出して、合長屋が協議の上、欠けた
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