てする時は、手を動かしながら、幾たびも俺《おいら》のせいじゃないぞと、口癖のようにいつも言う。
井戸端で水を浴びたり、合長屋の障子を、ト唾《つば》で破いて、その穴から舌を出したり、路地の木戸を石※[#「石+鬼」、第4水準2−82−48]《いしころ》でこつこつやったり、柱を釘で疵《きず》をつけたり、階子《はしご》を担いで駆出すやら、地蹈鞴《じだんだ》を蹈《ふ》んで唱歌を唄うやら、物真似は真先《まっさき》に覚えて来る、喧嘩の対手《あいて》は泣かせて帰る。ある時も裏町の人数八九名に取占《とっち》められて路地内へ遁《に》げ込むのを、容赦なく追詰めると、滝は廂《ひさし》を足場にある長屋の屋根へ這上《はいあが》って、瓦《かわら》を捲《ま》くって投出した。やんちゃんもここに至っては棄置かれず、言付け口をするも大人げないと、始終|蔭言《かげごと》ばかり言っていた女房《かみさん》達、耐《たま》りかねて、ちと滝太郎を窘《たし》なめるようにと、夜《よ》に入《い》ってから帰る母親に告げた事がある。
しかるに、近所では美しいと、しおらしいで評判の誉物《ほめもの》だった母親が、毫《ごう》もこれを真《まこと》と
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