話をするものがあって、毎日吾妻橋を越して一《ある》製糸場に通っていた。
留守になると、橋手前には腕白盛《わんぱくざかり》の滝太一人、行儀をしつけるものもなし、居まわりが居まわりなんで、鼻緒を切らすと跣足《はだし》で駆歩行《かけある》く、袖が切れれば素裸《すッぱだか》で躍出る。砂を掴《つか》む、小砂利を投げる、溝泥《どぶどろ》を掻廻《かきまわ》す、喧嘩《けんか》はするが誰も味方をするものはない。日が暮れなければ母親は帰らぬから、昼の内は孤児《みなしご》同様。親が居ないと侮って、ちょいと小遣でもある徒《てあい》は、除物《のけもの》にして苛《いじ》めるのを、太腹《ふとッぱら》の勝気でものともせず、愚図々々いうと、まわらぬ舌で、自分が仰向《あおむ》いて見るほどの兄哥《あにい》に向って、べらぼうめ!
三十
その悪戯《いたずら》といったらない、長屋内は言うに及ばず、横町裏町まで刎《は》ね廻って、片時の間も手足を静《じっ》としてはいないから、余りその乱暴を憎らしがる女房《かみさん》達は、金魚だ金魚だとそういった。蓋《けだ》し美しいが食えないという意《こころ》だそうな。
滝太は
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