して、」
「おい、声を出しちゃあ不可《いかん》、黙っていな、優《おとな》しくしてついてお出《いで》。あれそれ謂っちゃあ第一何だ、お前の恥だ。往来で見ッともない、人が目をつけて顔を見るよ。」と島野は落着いたものである。多磨太は案を拍《う》たないばかりで、
「しかり、あきらめて覚悟をせい。魚《うお》の中でも鯉《こい》となると、品格が可いでな、俎《まないた》に乗ると撥《は》ねんわい。声を立てて、助かろうと思うても埒《らち》明かんよ。我輩あえて憚《はばか》らず、こうやって手を握ったまま十字街頭を歩くんじゃ。誰でも可い、何をすると咎《とが》めりゃ、黙れとくらわす。此女《こいつ》取調《とりしらべ》の筋があるで、交番まで引立《ひった》てる、私《わし》は雀部じゃというてみい、何奴《どいつ》もひょこひょこと米搗虫《こめつきむし》よ。」
「呑気なものさね、」と澄まし切って、島野は会心の微笑を浮べた。
「さあ、行こう、何も冥途《めいど》へ連れて行くんじゃあないよ。謂わばまあ殿様のお手が着くといったようなものさ。どうして雀部や私《わし》を望んだって、花売なんぞが、口も利かれるもんじゃあない、難有《ありがた》く
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