屹《きっ》とお雪を見返った。
 径《こみち》に被《かぶ》さった樹々の葉に、さらさらと渡って、裙《すそ》から、袂から冷々《ひやひや》と膚《はだ》に染み入る夜の風は、以心伝心二人の囁を伝えて、お雪は思わず戦悚《ぞっ》とした。もう前後《あとさき》も弁《わきま》えず、しばらくも傍《そば》には居たたまらなくなって、そのまま、
「島野さん、お連《つれ》様もお見え遊ばしたし、失礼いたしますから、お嬢様にはどうぞ、」も震え声で口の裡《うち》、返事は聞きつけないで、引返《ひっかえ》そうとする。
「待ちなさい、」
「待て、おい、おい、おい、待て!」といいさま追い縋《すが》って、多磨太は警部長の令息であるから傍若無人。
「あれ、」と遁《に》げにかかる、小腕《こがいな》をむずと取られた。形《なり》も、振《ふり》も、紅《くれない》、白脛《しらはぎ》。

       二十八

「※[#「足+宛」、第3水準1−92−36]《もが》くない、※[#「虫+奚」、第3水準1−91−59]※[#「虫+斥」、第3水準1−91−53]《ばった》、わはは、はは、」多磨太は容赦なくそのいわゆる小羊を引立《ひった》てた。
「あれ、放
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