願《ねがい》でござります、お雪が用は明日のことになされ下さりませ。内には目の不自由な人もござりますし、四十物町までは道も大分でござりますで。」
「何だ、お前は。」
「へい、」
「さあ、行こう。」
 お雪は黙って婆さんの顔を見たが、詮方《せんかた》なげで哀《あわれ》である。
「お前様、何といっても、」と空しく手を掉《ふ》って、伸上った、婆は縋着《すがりつ》いても放したくない。
「知事様のお使だ。」と島野が舌打して言った。
 これが代官様より可恐《おそろ》しく婆の耳には響いたので、目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って押黙る。
 その時、花屋の奥で、凜《りん》として澄んで、うら悲しく、
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雲横秦嶺家何在《くもはしんれいによこたわっていえいずくにかある》
雪擁藍関馬不前《ゆきはらんかんをようしてうますすまず》
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 と、韓湘《かんしょう》が道術をもって牡丹花《ぼたんか》の中に金字で顕《あらわ》したという、一|聯《れん》の句を口吟《くちずさ》む若山の声が聞えて止《や》んだ。
 お雪はほろりとしたが、打仰いで、淋しげに笑って、
「ど
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