いきおい》よく、棒を突出したようなものいいで、係構《かけかまい》なしに、何か嬉しそう。
 言葉つきなら、仕打なら、人の息女とも思わぬを、これがまた気に懸けるような娘でないから、そのまま重たげに猟犬の頭《かしら》を後《うしろ》に押遣《おしや》り、顔を見て笑って、
「何?」
「何だって、大変だ、活《い》きてるんだからね。お姫様なんざあ学者の先生だけれども、こいつあ分らない。」と件《くだん》の手巾《ハンケチ》の包を目の前へ撮《つま》んでぶら下げた。その泥が染《にじ》んでいる純白《まっしろ》なのを見て、傾いて、
「何です。」
「見ると驚くぜ、吃驚《びっくり》すらあ、草だね、こりゃ草なんだけれど活きてるよ。」
「は、それは活きていましょうとも。草でも樹でも花でも、皆《みんな》活きてるではありませんか。」という時、姫芥子の花は心ありげに袂《たもと》に触れて閃《ひらめ》いた。が、滝太郎は拗《す》ねたような顔色《かおつき》で、
「また始めたい、理窟をいったってはじまらねえ。可いからまあ難有《ありがと》うと、そういってみねえな、よ、厭《いや》なら止《よ》せ。」
「乱暴ねえ、」
「そっちアまた強情だな、可
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