あぐら》を組んだ、――何等のものぞ。
 面赭《かおあか》く、耳|蒼《あお》く、馬ばかりなる大きさのもの、手足に汚れた薄樺色《うすかばいろ》の産毛のようで、房々として柔《やわら》かに長い毛が一面の生いて、人か獣《けだもの》かを見分かぬが、朦朧《もうろう》としてただ霧を束《つか》ねて鋳出《いだ》したよう。真俯向《まうつむき》になって面《おもて》を上げず、ものとも知らぬ濁《だ》みたる声で、
「猿の年の、猿の月の、猿の日に、猿の年の、猿の月の、猿の日に、猿の年の、猿の月の、猿の日に、」と支干《えと》を数えて呟《つぶや》きながら、八九寸伸びた蒼黒い十本の指の爪で、件《くだん》の細々とした、突けば折れるばかりの巌の裾をごしごしごしごしと掻※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《かきむし》る。時に手を留《とど》めてその俯向いた鼻先と思う処を、爪をあつめて巌の欠《かけ》を掘取ると見ると、また掻きはじめた。その爪の切入るごとに、巌はもろくぼろぼろと欠けて、喰い入り喰い入り、見る内に危《あやう》く一重の皮を残して、まさに断切《ちぎ》れて逆さまに飛ばんとする。
 あれあれ、とばかりに学士は目も眩《く
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