の色は面《おもて》に溢れた。ただ聞く、どうどうと水の音、巌もゆらぐ響《ひびき》である。
 少年はいと忙《せわ》しく瞳を動かして、下りるべき路を求めたが、衝《つ》と端に臨んで、俯向《うつむ》いて見る見る失望の色を顕《あらわ》した。思わず嘆息をして口惜しそうに、
「どこまで祟《たた》るんだな、獣《けだもの》め。」

       五十八

 少年を載せた巌は枝に留まった梟《ふくろ》のようで、その天窓《あたま》大きく、尻ッこけになって幾千仭《いくせんじん》とも弁《わきま》えぬ谷の上へ、蔽《おお》い被《かぶ》さって斜《ななめ》に出ている。裾を蹈んで頭を叩けば、ただこの一座山のごとき大奇巌は月界に飛ばんず形。繁れる雑種の喬木《きょうぼく》は、梢《こずえ》を揃えて件《くだん》の巌《いわ》の裾を包んで、滝は音ばかり森の中に聞えるのであった。頂なる少年は、これを俯《ふ》し瞰《みおろ》して、雲の桟橋《かけはし》のなきに失望した。しかるに倒《さかさま》に伏して覗《のぞ》かぬ目には見えないであろう、尻ッこけになった巌《いわお》の裾に居て、可怪《あやし》い喬木の梢なる樹々の葉を褥《しとね》として、大胡坐《おお
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