ていた。大鷲は今の一撃に怒《いかり》をなしたか、以前のごとく形も見えぬまでは遠く去らず、中空に凧《いかのぼり》のごとく居《すわ》って、やや動き且つ動くのを、屹《きっ》と睨《にら》んでは仰いで見たが、衝《つ》と走っては打仰ぎ、走っては打仰ぎ、ともすれば咲き満ちたうつぎ[#「うつぎ」に傍点]の花の中に隠れ、顕れ、隠れ、顕れて、道を求めて駆けるのを、拓は追慕うともなく後を跟《つ》けて、ややあって一座の巌石、形|蟇《ひきがえる》の天窓《あたま》に似たのが前途《ゆくて》を塞《ふさ》いで、白い花は、あたかも雪間の飛々に次第に消えて、このあたりでは路とともに尽きて見えなくなる処に来た。
もとより後《うしろ》は見も返らず、少年はお雪を抱いたまま、ひだを蹈み、角に縋《すが》って蝙蝠《こうもり》の攀《よ》ずるがごとく、ひらりひらりと巌《いわお》の頂に上った。この巌の頂は、渠《かれ》を載せて且つ歩《あゆみ》を巡らさしむるに余《あまり》あるものである。
時に少年の姿は、高く頭上の風に鷲を漾《ただよ》わせ、天を頂いて突立《つった》ったが、何とかしけむ、足蹈《あしぶみ》をして、
「滝だ! 滝だ!」と言って喜び
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