を握って高く上げると、大鷲の翼を蹈《ふ》んで、その頸《うなじ》を打ったのである。
「畜生、おれが目に見えねえように殺せやい!」
と怒気満面に溢《あふ》れて叱咤《しった》した。少年はほとんど身を棄てて、その最後の力を尽したのであろう。
黒雲一団|渦《うずま》く中に、鷲は一双の金の瞳を怒《いか》らしたが、ぱっと音を立てて三たび虚空《こくう》に退いた。二ツ三ツ四ツ五ツばかり羽は斑々として落ちて、戦《たたかい》の矢を白い花の上に残した。
少年が勇威|凜々《りんりん》として今大鷲を搏《う》った時の風采は、理学士をして思わず面《おもて》を伏せて、僵《たお》れたる肉一団何かある、我が妻をもてこの神将に捧げんと思わしめたのである。
かくして少年ははた掌《たなそこ》を拍《う》って塵《ちり》を払ったが、吐息を吐《つ》いて、さすがに心|弛《ゆる》み、力落ちて、よろよろと僵れようとして、息も絶々《たえだえ》なお雪を見て、眉を顰《ひそ》めて、
「ちょッ、しようのねえ女だな。」
やがて手をかけて、小脇に抱上げたが、お雪の黒髪は逆《さかさま》に乱れて、片手に黒百合を持ったのを胸にあてて、片手をぶらりと垂れ
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