は屹《きっ》となって、たちまち顔色を変えたのである。
理学士はこの時少年のいうことを聞こうとして、思わず堅唾《かたず》を飲んだ。
夢中の美少年に憤った色が見え、
「おいら、島野とは違うぜ。今までな、おい、欲《ほし》い思ったものは取らねえこたあねえ、しようと思ったことをしねえこたあなかったんだ。可いじゃあないか、不可《いけ》ねえッて? 不可ねえか。うむそうか、可いや、へん、おいら詰《つま》らねえことをしたぜ。」
と投げるようにいって、大空を恍惚《うっと》りと瞶《みつ》めた風情。取留めのない夢の想《おもい》で、拓はこの時少年がお雪に向ってなす処は、一つ一《びと》つ皆思うことあって、したかのごとく感じられて、快活かくのごとき者が、恋には恐るべき神秘を守って、今までに秋毫《しゅうごう》も、さる気色のなかったほど、一層大いなる力あることを感じて、愕然《がくぜん》とした。同時に今までは、お雪を救うために造られた、巌《いわお》に倚《よ》る一個白面、朱唇、年少、美貌《びぼう》の神将であるごとく見えたのが、たちまち清く麗しき娘を迷わすために姿を変じた、妄執の蛇であると心着いたが、手も足も動かず、叫
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