しかも事の行懸《ゆきがが》りから察し、人の語る処に因れば、この美少年は未見の知己、千破矢滝太郎に相違ない。千破矢は華族だ、今渠が来《きた》れ、共にこの労を慰めんといったのは、すなわちお雪を高家の室となさんという心である。されば少年がその意気と、その容貌《ようぼう》と、風采《ふうさい》と、その品位をもってして誰がこれを諾《うけが》わざるべき。拓が身をもってお雪と地位をかえたとすれば、直ちに我を棄てて渠に愛を移すのは、世に最も公平なことであると思って、満身の血が冷くなった。けれどもあえて数の多量なるものが、愛を購《あがな》い得るのではなかった。お雪は少年が優しく懸けた、肩の手を静かに払って、颯《さっ》と赤らむ顔とともに、声の下で、
「はい、私はあのお邸へ上ります訳には参りませんのでございます。」
恐る恐るいうおもはゆげな状《さま》を、少年は瞻《みまも》りながら、事もなげにいった。
「なぜだ。」
「内に拓さんという方がございます、花を欲しいと存じましたのも、皆《みんな》その人のためなんですから。」と死を極めたものの、かえってかかることを憚《はばか》らず言って差俯向《さしうつむ》く。
少年
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