えってつッけんどんに、
「生意気な講釈をするない、手前達《てめえッち》の知ったこッちゃあねえや、見殺しにされるもんか。しかし、おい、おいらも、まさかこれほどとは思わなかったが、随分手に余る上に、ものは食わずよ。どこへ出て可いか方角が分らねえし、弱った。活《い》きてる内ゃ助けてやらあ、不可《いけ》なかったら覚悟しねえ。おいら父様《おとっさん》はなし、母様《おっかさん》は失《な》くなったし、一人ぼッちで心細かったっけが、こんな時にゃあさっぱりだ、情《なさけ》なくも何ともねえが、汝《てめえ》は可哀そうだな。」といって、さすがの少年が目に暗涙を湛《たた》えて、膝下《しっか》に、うつぎの花に埋《うず》もれて蹲《うずくま》る清い膚《はだえ》と、美しい黒髪とが、わななくのを見た。この一雫《ひとしずく》が身に染みたら、荒鷲《あらわし》の嘴《はし》に貫かれぬお雪の五体も裂けるであろう。
 一言の答《いら》えも出来ない風情。
 少年も愁然《しゅうぜん》として無言で居たが、心すともなく極めて平気な調子で、
「しょうがねえやな、おい、そうしたら一所に死のうぜ。」と、自から頷《うなず》くがごとく顔を傾けていった
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