ける。
 お雪は失心の体《てい》で姿を繕うこともせず。両膝を折って少年の足許《あしもと》に跪《ひざまず》いて、
「この足手纏《あしてまとい》さえございませねば、貴方お一方はお助《たすか》り遊ばすのに訳はないのでございます。」
 と、いう声も身も顫えたのである。

       五十五

「私はどういたしましょう、花も取って頂きました上に、この山に入りましてから貴方ばかり酷《ひど》い目にお逢わせ申して、今までに、生命《いのち》をお取られ遊ばすかと思いましたことが幾たびあったでございましょう。体も疵《きず》に遊ばして庇《かば》って下さいますから、勿体ない、私は一ヶ所|擦剥《すりむ》きました処もございません。たとい前《さき》の世の約束事でも、これまでに御恩を受けますことはないのでございます。どうぞ私を打遣《うっちゃ》ってお逃げなすって下さいまし、お願《ねがい》でございます。貴方にこうして頂きますより殺されます方がどんなに心安いか分りません。失礼ながらお可哀そうで、片時もこんな恐《こわ》い処に貴方をお置き申したくはございませんから。」と、嗚咽《おえつ》していう声も絶断《たえだえ》。
 少年はか
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