えた、矢来のごとき木間《このま》々々には切倒したと覚しき同じほどの材木が積重なって、横《よこた》わって、深森の中《うち》自《おのず》から径《こみち》を造るその上へ、一列になって、一ツ去れば、また一ツ、前なるが隠るれば、後なるが顕れて、ほとんど間断なく牛が歩いた。いずれも鼻頭《はなづら》におよそ三間|余《あまり》の長綱をつけて、姿形も森の中に定かならず、牛曳《うしひき》と見えるのが飛々に現れて、のッそり悠々として通っていたのであるが、今|件《くだん》の大鷲が、風を起して一翼に谷を越え、その峰ある処、件の森の中へあからさまに入ったと思うと、牛は宙に躍って跳狂《はねくる》うのが、一ツならず、二ツならず、咄嗟《とっさ》の間《かん》に眼《まなこ》を遮って七ツ数えると止《や》んだ。
「しっかりしねえ、もう可いぜ。」といって、少年は手を放した。
お雪は血の気を失った顔を、恐る恐る上げて仰いだが、少年を見ると斉《ひと》しく身《み》を顫《ふる》わした。
「あらまたお背中を、ちょいと大変でございますよ。」
「可いッてことよ、こればかしが何だ。」といったが、あわれ身を支えかねたか、またどっさりと岩に腰を掛
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